「俳優へのライティングの結果は、撮影時にライティングがなくても後から変更できるので、このような環境は最適です」と彼は述べています。「自然に感じられ、ワークフローも本当に素晴らしいものです」
さらにリアルなものにするため、ドーリー トラックを備えた実物の映画撮影用カメラを Mocap スタジオに持ち込みました。これらは、Bukvić 氏の体や顔と同様にトラッキングされていました。これによって、チームはカメラの動きを Unreal Engine で正確に再現できるようになり、Bukvić 氏の MetaHuman はカメラに向かって直接演技を行うことが可能になりました。
「演技における主な原動力は、想像力です」と彼は語ります。「自分の感情に従えば、カメラの前で体が自然に動きます。この作品で、私は自分の内なる世界を模索したわけですが、その成果は本当に驚くべきものになりました」
クローズアップで表す人間味
チームが抱えていた大きな課題は、キャラクターの表情に主として全体的にフォーカスしなければならなかったことでしょう。
「クローズアップでの撮影は、動画や映画のベースとなるものです」と Šijak 氏は述べます。「それは、視聴者がキャラクターとコミュニケーションし、感情をやりとりする方法であり、すべてが現れるところなのです」
3Lateral Business の開発リードである Uroš Sikimić 氏は、MetaHuman Animator の開発を進めるためにどのようにこの課題が生かされたかを説明しています。「人間の表情というものは、とてつもなく複雑です」と彼は語ります。「人間の表情をつくる個々の筋肉の動きを手作業で再現するのではなく、そのあらゆる情報を分析できる強力なツールが必要でした」
そこから話をさらに広げたのは、3Lateral でアート ディレクターを務める Aleksandar Popov 氏です。「最も重要な要素は、もちろん目です」と彼は語ります。「全体的な印象をつくるのも壊すのも、ここにかかっています。そのため、こうした芸術的な観点から実際のデザインで多数の取り組みを行い、残った部分をテクノロジーで処理するようにしました」
Bukvić 氏の顔の演技は、ステレオ ヘッドマウント カメラのペアによって録画されました。その動画と計算された深度データはその後、MetaHuman Animator で 4D ソルバを使用して処理され、パフォーマンスの細かな部分やニュアンスをキャプチャし、視線の動きまでも再構築されました。
ここで MetaHuman Animator を活用したことにより、その結果は数分で確認できるようになりました。必要に応じて、アニメーションは Unreal Engine でさらに洗練したりドラマチックなエフェクトを追加したりするために微調整することが可能ですが、Blue Dot チームは、MetaHuman Animator による出力を仕上げるのに必要な手作業が最小限で済むことを認識しました。
「あんなにも演技が自然になるとは、思いもよりませんでした」と Bukvić 氏は語っています。「どんな細かい部分も反映されているのを見て、すっかり驚いてしまいました」
この結果の即時性と、これによる反復的プロセスがアーティスト、アニメーター、および俳優の間で促進され、さらにキャプチャの忠実度と相まって、MetaHuman Animator は、シネマティックスの制作のための強力なツールとなっています。アニメーション スタジオはセットで俳優と協力し、クリエイティブな直感に従って演技指導を行えば、それがアニメートされたコンテンツへと忠実に変換され、感動を生むシネマティック作品を制作できます。
「出力されたコンテンツの品質は、このテクノロジーを利用して完成されたものなのか、実際のカメラを使ってオンセットで撮影されたものなのか、見分けがつきません」と Šijak 氏は語ります。 「カメラワークや俳優のパフォーマンスなど、すべてが視聴者をショットに引き込むのです。失われるものはありません」